イタリア ドルチェ −お菓子(パスティッチェリア)の歴史−

イタリアのお菓子の起源は中近東にあるとされています。

まず、古代の人々は穀物を栽培し、それを粉にしてこねて生地を作り、それを熱した石の上や昔のオーブンというべきものなどで焼いて、それを食べていました。

このパンのようなものに豆類やフルーツを砂糖漬けにしたものや加熱したもの、はちみつなどを混ぜたものが今日のイタリアのドルチェにつながっています。

もともとドルチェを作る目的は儀式的なものからでした。南西アジア(現在のトルコ地域)のヒッタイト人は病気や怪我の回復を祈り、人間の形や体の部位をかたどったビスケットを作ったり、また素晴らしい未来を願って動物や物、星など形のものもありました。

エジプトのファラオ、ラムセス3世(B.C1100年代)のお墓が建てられた時には宗教的意味合いのパンやドルチェが作られました。これはあの世へ旅立つときのお供としてナイル川で取れる果物やハチミツ、ナツメヤシ、ブドウなどを使い50種類ものビスコッティやフォカッチャを作ったといわれます。


ギリシャでは沿岸より伝わってきた中近東の製法を自分達なりの方法にし、彼らの特産品である小麦、ブドウ、オリーブを使って生産を始めました。

このようにギリシャを経てローマ帝国へもドルチェが伝わり、首都ローマでは次のような2種類の人がいたそうです。一つは“Pistores dulciarii”、これはその時代のケーキ職人とされ、チャンベッレビスコッティなどを作りました。 もう一つは“Crustulari”と呼ばれ、市場を回ったり、コロッセオの観客席で商売するフリッテラの行商人がいました。また、この時代のドルチェはキリスト教の記念祭にも生産され、食べられていました。


時は十字軍時代に移り、当時の修道院の薬局では東洋の香辛料を取り扱うようになりました。 また、街では医薬と錬金術とのバランスととる職業組合としての薬局がありました。

料理人達は薬局にシナモン、グローブ、バニラ、サフラン、生姜などのスパイスを買いに行っていました。これらの目新しい品々の普及の中心には海に面する共和国(特にヴェネチア)の存在がありました。

また、ドルチェの香料として使用するアニスシロップ、ロザリオ、ラタフィア、オレンジの花やバラの花のエッセンスなどリキュールなども製造されました。これらの香料を使うことによってドルチェが現代の製法となっても、中世の香りを残すことができます。ボローニャのカルトゥジオ修道会ではスポンガータ エミリアーナパンフォルテを洗礼式用に特別に作りました。


ルネッサンス期は食卓に様々な影響を与えました。料理人達は主人やその客を喜ばせるための逸品を考案しました。この時代には初めてのレシピ選集が文献として残っています。

ローマ教皇ピオ5世の料理人であるスカッピはビュッフェに言及し、様々な種類のドルチェ(モスタッチョーリ ナポレターニピニョッカーティチャンベッレッテ ディ モナケなど)をサービスしました。

アメリカ大陸の発見によりカカオがヨーロッパへ入ってくるようになり、スペイン宮廷により1559年にサヴォイアのエマニュエレ フィルベルトのおかげでトリノへもたらされました。

また、ポー川流域の街では今まで薬用ドロップとして使用されていた砂糖が味を楽しむ為のキャンディーとして普及するようになりました。このように砂糖漬けの果物も同様にして普及しました。


ロンバルド−ヴェネト地方がハプスブルグ家により統治されていた時代、トリエステは地中海沿岸のオーストリアの河口としてコービーにおいてのヨーロッパの首都となりました。

1800年代中盤の産業革命はパスティッチェリアにも時代の分岐点となりました。つまり、一部は大量生産の道を進み、もう一方は家庭規模を守りました。

1891年にペッレグリーノ アルトゥージが出版した本には10ほどのレシピが紹介され、その後はたくさんのレシピが本となって出版されています。

用語説明

スポンガータ エミリアーナ:
エミリアロマーニャ州の特産品。アマレッティ、ヘーゼルナッツ、ハチミツ、松の実を中に詰めた焼き菓子。
チャンベッレ:
主にラッツォ州特産で、小麦粉にオリーブオイル、砂糖、干ブドウなどを混ぜ合わせ、その生地をドーナツ型にしてオーブンで30分ほど焼いたお菓子。また、中に白ワインやアニスの種などを入れたものもあります。
チャンベッレッテ ディ モナケ:
チャンベッレ参照。
パンフォルテ:
トスカーナ州シエナの特産品で主に10月から12月に作られます。ハチミツを使い保存食ともなるシエナの十字型のリッチャレッロというお菓子から名前を取ったアーモンドの焼き菓子。小麦粉、砂糖、オレンジやシトラスの砂糖漬け、ハチミツ、バニラ、シナモンなどを混ぜ合わせた生地を丸い形にし、200度のオーブンで焼いたもの。
ビスコッティ:
ビスケット/クッキーなど焼き菓子の総称。
ピニョッカーティ:
シチリア州特産品。卵、砂糖、ラード、小麦粉、レモンピールを混ぜ合わせてから2cm位の大きさにし、油であげます。周りにチョコレートやレモン味をつけた白砂糖などをかけてから食べます。
モスタッチョーリ ナポレターニ:
ナポリ州特産品。(その他のイタリアの地方でも探すことができます。)イタリアではクリスマスのお菓子です。小麦粉、砂糖、アーモンド、ハチミツなどを使った焼き菓子で、外側にチョコレートをかけたりもします。

 

イタリアドルチェ - お菓子の種類 −

■【プーリア州 (Puglia)】(首都:バーリ 人口:400万人 面積:19,000ku)

○ ビスコット チェリエーゼ (Biscotto cegliese)

cegliese

地元ではペスキュエッテーレ(Pescuettele)とも呼ばれ、チェリエ メッサピカ(ブリンディシ地方の町)の特産品です。もともとは祝祭日の為のお菓子でしたが、現在では一年中作られています。

1700年代に初めて作られたとされ、とあるドメニコという青年がお菓子学校に通いにナポリへ行き、そこで習得したことを両親に見せるために地元の原材料を使ってこのビスケットを開発したといわれています。

作り方はまずアーモンドを湯がき、皮をむいて日陰で2〜3日乾燥させます。そしてそれを炒ってみじん切りにし、砂糖・卵・コーヒーリキュール・ヴィンコットと混ぜ合わせます。その混ぜ合わせた生地を4〜5cmの太さ、1.5cm位の厚さにまとめます。これを2段重ねにし、その間にブドウのジャム又はチェリーのジャムを塗ります。そして正方形になるように切り、10分間オーブンで焼きます。

 
○ ボッコノット (Boconotto)

boconottoこのドルチェは柔らかいタイプのお菓子でモリーゼやカラブリアが特に有名な産地です。プーリア州では基本的に詰め物が他の州で使うものとは違います。州都バーリの近くのビトントではリコッタチーズや砂糖漬けフルーツが使われますが、バーリではクリームとダークチェリーのジャムを使います。

原材料は小麦粉、卵黄、バター、砂糖、レモンピール、食塩が生地となります。クリームは小麦粉、卵、砂糖、牛乳を煮詰め、冷ましてから前記の生地に詰めます。詰め終わったら形を厚さ5mmの円盤型にして約30分オーブン中火で焼きます。

 

 

○ カルテッラーテ (Cartellate)

cartellateプーリア州の首都バーリではこのカルッテラーテはクリスマスシーズンのお菓子として人気のあるものです。特徴的な原材料はモストコット(ブドウを煮詰めたジュース)とコット ディ フィキ(いちじくを煮詰めたもの)です。このコット ディ フィキはゆっくりと煮詰めたいちじくを濾したもので、もともとの量の半分位しかとれない貴重なものです。

カルテッラーテは小麦粉、オリーブオイル、白ワインをベースに生地をつくり、花びらの形に成形します。その後、生地を寝かせから油で揚げます。そして温めたモストコットもしくはコット ディ フィキの中に揚げたものを浸します。最後にシナモンやクローブをお好みでかけて出来上がりです。

 

 

○ ディータ デリ アポストーリ (Dita degli apostoli)

dita apostoli昔はこのお菓子はイースターの時期に作られていました。この名前は細長い指の形からつけられたと言われています。リコッタチーズをベースにしたものを詰め、ロール状にしたクレープです。生地は卵と水を使い、薄く軽くのばして焦げ付かないフライパンにエキストラバージンオリーブオイル又はラードで焼きます。中の詰め物はリコッタチーズ(また、生クリームをお好みで足して)、砂糖、ダークチョコレートを削ったもの、または砂糖漬けシトロン、アニスリキュールまたはチェリーリキュールを混ぜ合わせたものを使います。生地を壊さないように詰め物を入れてロール状に巻きます。

 

 

○ モスタッチョーリ (Mostaccioli)

mostaccioliこのドルチェは主にクリスマスシーズンに食べられるもので、小麦粉、砂糖、アーモンド、レーズンなどを混ぜ合わせ、ひし形などの形にしてオーブンで焼きます。最後にチョコレートでコーティングして食べます。(カラブリア州モスタッツオーリ参照)

 

 

○ マンドルラッチョ エ トッツェッティ (Mandorlaccio e tozzetti)

mandorlaccio このマンドルラッチョの起源はローマ帝国の征服より前の時代の、農民の古くからの伝統にまで遡ります。昔ながらのレシピはプーリア州の田舎地方で受け継がれました。原材料は砕いたアーモンド、ハチミツ、卵、砂糖です。

もう一つの種類であるドルチェであるトッツェッティはブリンディジで人気のあるシンプルなアーモンドのお菓子です。この原材料は小麦粉、アーモンド、卵、卵黄、イースト、オリーブオイル、砂糖です。生地を混ぜ合わせ棒状にし、卵黄を周りに塗り、オーブンへ入れます。その後、一度取り出して輪切りにしもう一度オーブンへ入れてカリッとさせます。

 

 

○ プルパーテ (Prupate)

prupateこのプルパーテは非常にシンプルなドルチェで、プーリア州の至る所で見られます。昔はこのドルチェは婚約や結婚式の際に作られていました。この鎖がつながったような形は信頼のシンボルとなっています。

原材料は卵、小麦粉、イースト、ラム酒、シナモン、ハチミツ、砂糖、クローブで、生地を丸一日以上寝かします。形を結び目のある棒状にして約1時間オーブンに入れます。

 

 

○ スカルチェッラ (Scarcella)

scarcella“イースター、早く来いイースター。子供達は心から待ちわびて。卵のスカルチェッレ、卵のスカルチェッレ!”という童謡があります。このドルチェは子供の為のものです。鳩、籠、リング、子羊の形をしたお菓子はイースター(復活祭)の朝食として食べられます。

小麦粉、油もしくはラード、砂糖、卵、レモンピール、アニスリキュール(又は辛口のリキュール)、牛乳、食塩を混ぜ合わせ、約1時間ねかせます。そして、型取りしオーブンで30分位焼きます。

最後に飾り用砂糖などを表面にまぶします。
また、アーモンドやレモンなどを入れてもおいしくなります。

 

 

○ タラッリ (Taralli)

taralliこのタラッリはプーリア州全体を代表するビスケットです。

この原材料はとてもシンプルで水、小麦粉、卵、ラード(現在はオリーブオイルやバターで代用)です。形は常にリング状です。また、これにワインをいれて柔らかめにしたり、表面を砂糖がけにしたりします。

 

■【カンパーニャ州 (Campania)】
(首都:ナポリ 人口:570万人 面積:13,595ku)

○ ババ (Babà)

baba現在では伝統的ナポリ菓子となったババはポーランド王スタニスラオ1世の料理人によって発明され、1738年ポーランドからフランスに伝わりました。パリの菓子職人ストレルは仕える宮廷でババのレシピを学びました。

スタニスラオ王は千夜一夜の熱心な読者でこの物語の登場人物に敬意を払い、ババという名前がつけられたといわれています。1800年代にババがナポリ特産のものとなったのですが、これはナポリ貴族の料理人たちがパリへ招待され、フレンチキュイジーヌの教育を受けたおかげでもあります。

イーストを少しの水で溶かし、少量の小麦粉と混ぜて生地をつくり、それを膨らませます。別のボールに小麦粉、卵、溶かしバター、食塩、砂糖を入れ、ひとまとまりになるまで混ぜ合わせます。この生地とイースト生地をゆっくりと混ぜ合わせていきます。暖かい場所で2倍の大きさになるまで生地をねかせます。そして型に流し込みます。ババをオーブンで焼いている間に水、砂糖、ラム酒を煮立てシロップを作ります。ババが焼きあがったら熱いうちに型からはずしシロップに浸します。クリームなどを添えて食べます。

また、ソレント地方ではリモンチェッロなどに浸したりもします。
キノコの様な特徴ある形とラム酒に浸したケーキはサバランの原型とも言われています。

 

 

○ ロッココ (Roccocó)

roccocoこのドルチェはクリスマスのお菓子ですが、それだけではなく、普段でも人気のあるものです。ヘーゼルナッツ、白胡椒、シナモン、クローブをすり鉢と摺りこぎ棒で粉にしたものを使います。丸い貝殻のような形で、この名前はフランス語の”Rocaille”よりきており、イタリア語では“石切り場”と訳されます。(このお菓子の硬さを象徴しているといえます。)”Roccoc_”(子音が2つ重なって訛りとなります)は特にこの香りあるフランスのドーナツ型のお菓子に由来します。また、このビスケットの硬さは歯の健康にも良いとされます。

生地はどちらかというと硬めで、小麦粉、水、砂糖、アーモンド、レモンピールまたはオレンジピールなどでできています。それを小さく分けて直径約10cmのドーナツ型にします。表面は卵を刷毛で塗ってオーブンで15分ほど焼きます。

 

 

○ スフォリアテッレ (Sfogliatelle)

sfogliatelleスフォリアテッレはナポリのルッカのサンタクローチェ修道院で生まれたといわれています。製造方法は1820年まで修道院の資産とされていました。この時にナポリの菓子職人パスクアーレ ピンタウロがこのレシピを手に入れ、作り方を習得しました。こうしてスフォリアテッレがナポリの街中に広まってゆきました。

小麦粉、水、食塩、ラードで作った生地はとても細く、薄く、長く、何メートルにも伸ばすことで、厚さはわずか1mmになります。これを適当なところで切り、貝殻の形に包むように巻いていきます。そしてセモリナ粉を茹でたもの、リコッタチーズ、卵、砂糖、砂糖漬けの果物を刻んだもの、バニラやシナモンを香料にしたものを混ぜて、それを巻いた生地に詰めます。鉄板にラードを塗り、スフォリアテッレを置き、卵をといたものを刷毛でぬってオーブンで15分焼きます。焼きあがったら砂糖を表面にまぶして熱いうちに食べます。

 

 

○ トルタ カプレーゼ (Torta caprese)

capreseその名が示すようにカプリ島だけでなく、ソレント半島やアマルフィ海岸にも普及しており、前世紀くらいから開発されたカプリのモダン菓子とされています。

ソレントの女性作家チェチリア コッポラがこのケーキの歴史を彼女の著書の中で書いています。それによると、アルカポネの為の取引でカプリに来た3人のアメリカンマフィアの為に料理人カルミネ ディ フィオーレはアーモンドケーキを作る際に小麦粉を入れ忘れてしまいました。結果的には大変おいしいものができ、アメリカンマフィアはそのレシピを欲しがり、ディ フィオーレはカプレーゼと名づけ、このケーキのレシピを確立させ、これがすぐに大成功を収めたとういうものです。

作り方はアーモンドの皮をむいたもの、ダークチョコレート、ビスケットを細かく刻みます。卵白を泡立て、砂糖を入れて泡状になるまで混ぜます。次にバターを徐々に加え、刻んだアーモンドなどをいれます。200℃のオーブンで50分焼き終わったら冷まして周りに砂糖とシナモンをふりかけて出来上がりです。

 

 

○ ストゥルッフォーリ (Struffoli)

struffoliストゥルッフォーリという名前は小さな球を意味する古代ギリシャ語“Strongulos”に由来します。このドルチェはマグナグラキア(大ギリシャ)と呼ばれる南部イタリア全域に存在します。しかし、ナポリでのレシピは1700年代にルッカのサンタクローチェとスプレンドーレのサンタマリア修道院の修道女達によって古代のレシピが再現されました。ストゥルッフォーリはレモンピール、リモンチェッロ、アニスリキュールを使って香りをつけていました。現在ではお祭りの時によく食べられます。

ふるいにかけた小麦粉を砂糖、溶き卵、レモンピール、イースト、リモンチェッロ(又はアニスリキュール)、食塩で生地を作ります。生地は手でこねてから30分ねかせます。次に生地を何等分かにして細い棒状にします。それを1cmの粒に小さく切ります。また30分ねかせてから、熱したオリーブオイルで揚げます。油をきり、冷まします。そしてリキュール入りのハチミツ全体にかけ、最後にカラーシュガーなどで飾ります。

 

■【バジリカータ州 (Basilicata)】
(州都:ポテンツァ 人口:60万人 面積:9,992ku)

○ カルツォンチェッリ (Calzoncelli)

calzoncelliこのドルチェの起源は古いもので、いつ、誰が作り始めたかはっきりとしません。カルツォンチェッリは貧しい人々のためのビスケットとされ、アーモンドや果物などが中に入っておらず、ヒヨコ豆の粉や栗の粉などのみで作られ、ラードで揚げました。砂糖やチョコレートがなかったので中にはモストコット(ブドウの煮汁)を詰めていました。

今日では壊れやすくカリカリしたこのお菓子はアーモンド、砂糖、ダークチョコレート、栗の粉、オレンジピール、白ワインをベースにしたものを詰め物としています。

 

 

○ クロストル (Crostol')

crostol古代の伝統を今日に引き継いだバジリカータ州のある地域に伝わる結婚のお祝いの為のドルチェです。

結婚式の数週間前の夜中に女性達は400〜500個の卵を使って翌日に村中に配るクロストルを作ります。これを作るにはセモリナ粉と卵を光沢が出るまで混ぜた後、めん棒で薄くのばします。

ローラーを使って4cmの幅に切り、10cm位の長さを指で貝殻のように丸めてから油で揚げます。油から上げてから温めたハチミツをその上からかけます。最後に砂糖をまぶします。

 

 

○ リングエッテ (Linguette)

liguetteバジリカータ州にも修道院で作られていたドルチェがあります。この名前の由来はまったく明らかですが(Linguetteは舌という意味があるため)、お菓子の観点からいうと疑問もあります。リングイエッテはカルメル修道院の依頼によってメンバーの修道女達によってクリスマスシーズンに作られていた厚みのあるビスケットです。

基本原材料はブドウ収穫の季節に作られるモストコット(ブドウの煮汁)です。生地は小麦粉、砂糖、モストコット、カカオ、など。これらを混ぜ合わせ、四角い厚みのある形に切ります。

砂糖やカカオをまぶしてオーブンで20分焼きます。

 

 

○ ピッツィカッネッリ (Pizzicannelli)

pizzicannelli厚み、太さのあるビスケットのレシピは田舎を起源としています。昔は原材料を見つけることが難しく、その地域では貧困が広がってゆきました。よって原材料は大変質素でした。

時代が変わると小麦粉、砂糖、オイル、アーモンド、チョコレート、コーヒー、カカオ、レモン、シナモンなど豊富に使うようになりました。これらを生地にして型取りし、オーブンで25分位焼きます。焼きあがったら一度冷やしてチョコレートを表面にかけます。

 

■【カラブリア州 (Calabria)】
(州都:カタンツァーロ 人口:200万人 面積15,082ku)

○ ムッチェッラート (Muccellato)

muccelatoこれはイースターの時に食べるドルチェで、復活祭(イースター)の聖人の週に準備されます。このタイプのお菓子をイタリア全土で見つけることは可能ですが、このムッチェッラートには2つのタイプあります。

一つは天然酵母を使って作られるもので、香りと味の強さが特徴的です。もう一つはドライイーストを発酵剤として使うので、分離することがありません。

小麦粉、牛乳、エキストラバージンオリーブオイル、ラード、砂糖、発酵剤、レモンやオレンジの皮をすったものを生地とし、オーブンで焼きます。

 

 

○ ムスタッツオーリ (Mustazzuoli o'nzudde)

nzuddeムスタッツオーリ(又はモスタッチョーリ Mostaccioli)はアラブを起源とする昔からあるドルチェといわれています。ローリエの葉の上にそっと置いてオーブンで焼いた結婚式用の古代フォッカッチャであるラテン語の“mustaceus”が名前の由来となっています。

このドルチェは人や動物の形をしたビスケットで、幸運をもたらすものと考えられおり、祝祭などに作られていました。

小麦粉、重炭酸、酵母、オリーブオイル、ハチミツ、砂糖、オレンジジュース、アマレットなどのリキュール、食塩などの原材料を混ぜ、形をつくりオーブンで焼きます。柔らかさが残るようにし、飾りつけをして出来上がります。

 

 

○ ピパレッリ (Piparelli)

piparelliレッジーナ地方特産のドルチェで、色は濃く、カリッとした歯ざわりで、表面はアーモンドの白色を脂肪部分に見立てたサラミをイメージさせます。

このドルチェは小麦粉、砂糖、ハチミツ(おすすめは栗、オレンジ、アカシアのもの)、マーガリン、重炭酸、アーモンド、卵、シナモン、クローブを使います。生地を幅5cmくらいの棒状にのばします。1回目にオーブンで焼いたあとに、スライスしてビスコッティの形にして50℃のストーブでさらに丸2日間焼きます。

 

 

○ ストマティコ (Stomatico)

stomaticoギリシャ語の“stomatikos”に由来するストマティコは口内粘膜の病気に効くものでした。よってドルチェとは程遠いもので治療目的でした。そして、これを食べる人は体調がよくなると言われ、口伝えで製法が伝わっていきました。このストマティコは現在では消滅の危機にあります。  

作り方は、砂糖(普通の砂糖もしくはカラメル状にしたもの)、小麦粉、ラード、重炭酸、水、アーモンド、バニラ、シナモン、クローブなどを混ぜ平らに生地をまとめます。そしてオーブンの鉄板に敷き、表面にアーモンドをおいて180℃で焼きます。そして取り出してカットしてから今度は50℃のストーブで2日間焼きます。

 

 

○ ススメッレ (Susumelle)

susumelleイタリアの家庭で好まれて作られ、またお菓子屋さんでも買うことができるドルチェです。平らで楕円形をしたこのビスケットはチョコレートや砂糖がけで周りをコーティングしてあります。元来はクロトーネ、ヴィボ ヴァレンティア地方の特産品でした。

クリスマスの季節に屋台で売られていた昔ながらのこのドルチェは小麦粉、砂糖、ハチミツ、ドライイースト、マーガリン、砂糖漬けフルーツ、レーズン、シナモンなどが原材料となります。

 

■【シチリア州 (Sicilia)】
(州都:パレルモ 人口:500万人 面積:25,710ku)

○ アルゲリーニ (Algerini)

algeriniこのアルゲリーニはシチリア州でもっとも有名になったドルチェの一つと言われています。これだけ知れ渡っているにもかかわらず、その由来やどのようにして出来たのかということは残念ながらわかっていません。しかし、1800年代後期に海賊の侵攻によってアフリカより伝わってきたのではないかとも言われています。

レシピは非常に簡単で、小麦粉、砂糖、卵、ラード、などで生地を作ります。これを3〜5mmの厚さで丸い形にしてオーブンで焼きます。オーブンから取り出し、冷ましてから粉砂糖をふりかけて出来上がりです。

 

 

○ カンノーリ (Cannoli)

cannoli現在ではいつでも食べることのできるこのドルチェは、昔は謝肉祭の時に作られる伝統的なものでした。シチリアの地方によって中に詰めるものが変わり、西シチリア地方ではリコッタチーズ、砂糖漬けフルーツ、カカオ、コーヒリキュール、マルサラ酒を使います。また、メッシーナとカターニャではホワイトクリームやチョコレートクリームを中に詰めます。パレルモではサンタカテリーナ修道院の修道女達によって作られる巨大なカンノーリが有名でした。

小麦粉を調理台に真ん中に穴を開けるように盛り、油、卵、卵黄、砂糖、赤ワインを真ん中に入れます。生地がよい固さにまとめた後、めん棒で薄く伸ばします。これを1辺約10cmの正方形に切ります。切ったものに缶などを置いて生地を巻き、カンノーリの特徴である形にします。これをオーブンで焼いてから、詰め物をいれて出来上がりです。

 

 

○ ジェロ (Gelo)

geloこれはシチリアの人々に好まれる夏のゼリーです。パレルモの守護聖人である聖ロザリア祭の7月15日に食べられます。一番人気はメロン味もしくはスイカ味です。

メロンもしくはスイカの種と皮を取り除いてから実を細かく切り、裏ごしします。これでできたジュースを弱火で熱し、ゼラチン、砂糖、シナモン、ジャスミンエキスなどを足しながら混ぜます。煮詰まってきたら型や器に入れ、冷蔵庫で1時間ほど冷やします。できあがったらチョコレートを削ったものやジャスミンの花、ピスタチオを飾りに添えます。

また、このジェロはシチリアの地域によって、他のフルーツを使ったものや、またコーヒー味のジェロなどがあります。

 

 

○ パスタ レアーレ (Pasta reale)/マルツァパーネ (Marzapane)

marzapaneシチリアではマルツァパーネ(マジパン)と呼ばれます。これと同じ製法のものが中央ヨーロッパでも良く知られていました。アーモンドは古代シチリアのトリナクリア(=現在のシチリア島)の特産でした。よってアーモンドを使い、フルーツの形をしたドルチェであるパスタレアーレが作られました。また、パレルモのマルトラーナ教会のシスター達がこの製造に秀でていたのでフルッタ マルトラーナとも言われるようにもなりました。

パスタ レアーレは11月2日(全聖人の日の翌日)に子供たちへのプレゼントとして作られます。

レシピは水に砂糖を入れ弱火で熱していきます。砂糖が溶けたら火から外し、アーモンド粉とバニラの中に流し入れ、生地がまとまるまで混ぜ合わせます。その後、冷やしてから生地につやが出るまで手でこねていきます。そして、色をつけたり、形をつくったりして、最後にアラビアガムで光沢を出します。

 

 

○ パステ ディ マンドルレ、ノッチョーレ、ピスタッキ
(Paste di mandorle, nocciole, pistacchi)

pasta mandorleシチリアの小さなパスティッチェリアではよくナッツ類を使ったものに出会います。

アーモンドをベースにしたドルチェはトラパニの街で作られるのものが有名です。斜面の多い地域ではおいしいピスタチオを使ったお菓子が多く、また、ネブロディやエトナ山の地域ではヘーゼルナッツのお菓子が特産です。

このドルチェの製法は家庭で伝わる伝統的なものですが、とてもシンプルです。皮をむいたアーモンド、ピスタチオ、ヘーゼルナッツを細かく刻み、砂糖、ハチミツ、卵白と混ぜ合わせます。そして、丸い形、楕円形、など土地の伝統にそったものやアイディアをいかして形をつくり、オーブンで熱します。最後に飾り用のフルーツやナッツ、砂糖などで表面を飾ります。

 

 

○ クアレシマーリ (Quaresimali)

quaresimaliこのお菓子はパレルモ、トラパニ、カターニア、シラクーサなどのシチリア島中の街で見かけられます。この名前はキリスト教の四旬節(Quaresima)の期間に食べられていたことによりついたと言われています。

トラパニで作られるクアレシマーリはまたの名をタリアンコッツィ(Tagliancozzi)といいます。

乾煎りし、砕いたアーモンドにオレンジの砂糖漬け、砂糖、小麦粉、重炭酸、シナモン、ヘーゼルナッツを加え、卵を入れて混ぜます。生地を100〜150gの棒状(ビスコッティのような形)にして、これをオーブンで焼きます。出来上がったらアラビアガムとピスタチオを混ぜたものを周囲にかけます。

 

■【サルデーニャ州 (Sardegna)】
(州都:カリアリ 人口:164万人 面積:24,090ku)

○ コリゲッドス (Corigheddos)

corigheddosサルデーニャ島の心臓部分であるヌオーロ地方の特産です。高い山と深い谷のあるいわば閉鎖的な地理条件で伝統的なドルチェができました。

昔は結婚式の時に新婦の母や姑が新婚夫婦の素晴らしい未来を祈ってこのお菓子を作りました。

オレンジピールを刻んで、アーモンド、ハチミツを混ぜ合わせたものをハート型のビスケットに詰めます。

 

 

○ ピリキトス (Pirikitos)

pirikitosスペインから来たドルチェです。どちらかというと歯ざわりは固く、周りは砂糖をかけており、丸みをおびた形です。

地元の聖ビアージョの祭りで伝統的に食べられていました。
このドルチェは高カロリーで元気の素とされ、小麦粉、卵、砂糖、オリーブオイルまたはラード、レモンなどを使います。これらを混ぜ合わせた後、5cmほどの丸みのある形にしてオーブンで焼きます。最後に水、砂糖、レモンピールで作ったシロップに浸して出来上がりです。

 

 

○ トゥルタ デ アッレスコットゥ (Turta de arrescottu)

arrescottuサルデーニャは伝統的チーズ作りにおいて大変歴史のある島です。よってペコリーノチーズやリコッタチーズを使ったドルチェの生産は当然のことでした。

このケーキは羊乳や牛乳を使ったリコッタチーズに少量の牛乳を入れて滑らかになるまで泡立てます。そして、少しずつ卵黄、小麦粉、砂糖、レモンピール、酵母、を加えて、最後にメレンゲを入れます。丸いケーキ型に生地を流し込み中火のオーブンで40分ほど焼きます。焼きあがったら粉砂糖を周りにふりかけます。

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